硝子体とは
硝子体は、水晶体の奥にあるゼリー状の透明な組織です。眼球の大半を占めており、眼球の外側を覆う強膜とともに眼球の形態を保持させる役割もあります。この硝子体が何らかの原因により網膜を牽引したり、濁ったり、出血したりすると、様々な障害が引き起こされます。ひどくなると、失明の原因になることもあるので、注意が必要です。
網膜硝子体手術
硝子体内部に起こった疾患を治療するため、眼内の出血や濁り異常な膜組織などを除去する手術のことを「網膜硝子体手術」と呼んでいます。具体的には、白目の部分に3ヵ所の小さな穴を開け、そこから細い器具を眼内に挿入して眼の中の出血や濁りを硝子体と一緒に取り除き、網膜の機能を回復させます。当院では、このような網膜硝子体手術を行っています。なお、手術の主な流れは、下記のとおりです。
主な流れ
- まず点眼麻酔の上、局所麻酔を眼球の後方に行います
- 眼球に1㎜以下の小さな孔を3ヵ所ほど開け、そこから手術器具などを挿入します。それぞれの孔は、「術中に眼球の形態を保つための灌流液を注入」、「眼内を照らす照明器具」、「硝子体を切除するカッターやレーザープローブの挿入」という役割があります
- 眼の中の出血や濁りを取り除いたり、レーザーで新生血管を凝固したりして網膜・硝子体を治療していきます
- 除去した硝子体の代用として、水・空気・ガス・シリコーンオイルのいずれかを眼内に置換します。手術時間は、原因疾患によって異なりますが概ね30分~40分です
網膜硝子体手術の主な適応
網膜硝子体手術は、網膜剥離や糖尿病網膜症、網膜前膜(黄斑上膜、黄斑前膜)、黄斑円孔、黄斑浮腫などの患者様に対して行われます。このうち網膜剥離は、文字どおり網膜が剥がれてくる病気です。加齢などで網膜に穴が開き、液化した硝子体が網膜の下に入り込んでに網膜が剥がれたり(裂孔原生網膜剥離)、糖尿病網膜症が進行したときなどにも起こります(牽引性網膜剥離)。裂孔原生網膜剥離は早期手術が必要ですので、飛蚊症(黒い点や糸のようなものがみえる)や視野障害(端の方から見にくい場所が広がってくる)を急に感じるようになった場合は速やかに眼科受診が必要です。
糖尿病網膜症は、糖尿病の合併症のひとつです。網膜の毛細血管が閉塞して血の巡りが悪くなったり、硝子体出血や黄斑部の浮腫が引き起こされたりします。さらに進行すると、重篤な牽引性網膜剥離や血管新生緑内障で失明してしまうこともあります。糖尿病の方は定期的に眼科で眼底検査を受けることが必要です。
網膜前膜は網膜の上に異常な膜組織が形成されることで網膜が変形し、歪みや視力低下、ものが大きく見える症状(大視症)を来す疾患です。碁盤の目やエクセルの表など、線が歪んで見えることで気づく場合があります。徐々に進行することが多いですが、稀に急激に進行する場合もあります。
黄斑円孔は、硝子体からの牽引などによって黄斑部の網膜に穴が開く病気です。黄斑部は物を見るための重要な役割があるため、黄斑円孔になると非常に物が見えづらくなり、視力低下や歪んで見えたり、中心が見にくくなります。黄斑浮腫は、黄斑に液状の成分が溜まり、むくみを起こして視力が低下する病気です。進行すると、視力が低下したり、物がゆがんで見えたりします。